「サムライの古径」の守り人 ~さくら竹垣物語25~更新日:2023年05月02日

 『LINE旅人大賞』で特別賞を受賞し、全国的に有名になった「サムライの古径・ひよどり坂」。2023年2月に大修繕を終え、さらに見ごたえのあるランドマークとなっています。
 今回の大修繕や、毎月の整備をボランティアで続ける団体「さくら竹垣物語25」代表 山﨑龍太郎氏にインタビューしました。

自然のままに、さわやかに

――どんなきっかけで「さくら竹垣物語25」は結成されましたか

 私たちは佐倉市立中央公民館で実施している「市民カレッジ」25期の同期生なのです。
 市民カレッジの2年生は、自主テーマを決めてまちづくりをする授業があります。私たちのまちづくりのテーマとして、「老朽化したひよどり坂をなんとかしよう」と決めたのがきっかけです。

――ひよどり坂ではどのような活動を行ってきましたか?

 1期目が2017年、翌年を2期目として、ひよどり坂の竹垣を2年に分けて整備しました。その後は、志津コミュニティセンター、佐倉城址公園、武家屋敷の生垣整備に活動の幅を拡げました。
 また、ひよどり坂では、毎月1回の清掃作業を今も続けています。今回の大改修では、行政が材料費を支援してくれましたが、それ以外は完全にボランティアです。数年に1回は改修が必要なので、官民が共生し、お互いのできることで継続的な整備を目指したいですね。

2023年1月に佐倉市長表彰を受賞

――ひよどり坂の管理のコツを教えてください。

 ほどほどに清掃することですね。適度に落葉しているのも大事なのです。自然のままに、さわやかに。
 大風が吹いた後は、竹が倒れていないか、仲間内でも常に目をかけています。倒れているとの報告が入れば、行政に連絡して片づけます。
  行政とうまい関係性を築くのも大事です。人間同士ですから杓子定規にせず、なんでも言いあえる関係があるから、協働していけます。

――苦労を感じることはありますか。

 外作業ですから天候には左右されます。
 また、コロナ禍でも整備を続けた方がいいか悩みましたね。特に、コロナ初期にはメンバーみんなが警戒していました。
 それに、メンバーの年齢が上がり、後継者問題があります。市民カレッジの仲間でつくった結束力が強い団体ですから、新しい人の受入れも思案どころです。

自分たちでもやれるんだ

――「さくら竹垣物語25」が当初の整備を始める前、昔のひよどり坂の姿を教えてください。

 ぼろぼろでしたね。竹は倒れて歯抜けになり、周囲も荒れ放題。階段も整備されていませんでした。行政が階段を整備し、同時に私たちも竹垣を整備したら、きれいになりました。

整備する前のひよどり坂

――最初の整備が終わったときの感想は?

 「やった!」と思いました。私たちメンバーは全員、年金生活者。特段の経験もない主婦や元サラリーマンです。「それでも、やれるんだ。」と実感しました。達成感は、いくつになっても味わえるものですね。自分で自分をほめてあげたいと、メンバー全員が満足しました。

――やりがいを教えてください。

 来た人が喜んでくれることです。作業中も「きれいになりましたね」と声がかかります。統計から見ても、ひよどり坂への来訪者は増えました。LINE旅人大賞の受賞や、千葉県のポスターにも採用されています。

――ひよどり坂は、今や全国的な人気スポットになりましたね。

 きれいになったことに満足していましたが、これほどプロモーションされるとは想像していませんでした。テレビで放送されると、メンバー同士ですぐに報告し合います。自分の仕事がこんなにメディアに取り上げられることも、やりがいにつながっているんですよ。
 ひよどり坂は、以前は佐倉の観光地と認められていませんでしたが、今では行政も目を向けてくれるようになりました。
 きれいにしたらお客さんは来ると、強く実感しています。

令和の大改修

――佐倉市観光協会の委託により、2022年10月から2023年2月まで、「さくら竹垣物語25」が生垣の大改修を行いました。改修前は、生垣はどのような状態だったのですか?

 初回の整備を終えて5年も経つと、竹が倒れ、劣化が著しくなってきました。みんなで整備した竹林が朽ちていくさみしさを感じました。
 竹は見た目も強度も経年変化が激しい性質で、もって4年です。ひとたび劣化すると、簡易的に補修できる範囲を超えてしまう。常に手を加えなくては維持できないものなのです。
 せっかく観光地化しても、劣化して信用を落とすのは簡単。小手先作業では補修はできない、待ったなしでやらなくてはという思いが強くなってきました。そこで、このたびの大改修に至ったのです。

四ツ目垣を手分けして組む

――今回の改修でいちばん大変だったことは何ですか?

 最初の整備は2年に分けましたが、今回は1回でやりましたから、その分、労力がかかりましたね。ひよどり坂は傾斜があるし、道なりも湾曲している。そんな地形のなか、両側の生垣を整備しました。作業全体のボリュームが増しました。

――こだわりポイントを教えてください。

 今回は鉄砲垣や四ツ目垣など多様な垣づくりに取り組み、修景にふさわしくない鉄板に目隠しをするなど工夫もこらしました。また、四ツ目垣がこれまでより20センチほど高くなりました。
 旅行中に美しい竹垣を目にすると、この手法をひよどり坂に取り入れたいとつい考えてしまい、今回は実際に取り入れてみました。
 最初の整備の時より、みんなのスキルも経験も上がりましたから、きれいになりましたよ。

――今後はどういった活動を行いたいですか?

 観光施設を中心に整備活動を続けていきたいですね。2023年度は佐倉城址公園の茶室・三逕亭を整備する予定です。
 材料費が確保できるなら、将来的には旧堀田邸も整備したい。佐倉城址公園や旧平井家など、喜ばれる場所を修繕していきたいですね。

もっと観光地になれる

――ツアーや観光客も増えました。来訪者へメッセージはありますか?

 できればもっと佐倉に滞在してほしいです。成田観光などのついでに佐倉を訪れる方が多いのか、佐倉での平均滞在時間は約50分というデータがあります。
 ひよどり坂に立ち寄るならば、武家屋敷や佐倉城など周辺エリアを観光してほしいし、長時間滞在してお金を落としてほしいです。

――まちづくりは、みんなで支えあい

 そのためにも、観光客がもう少し長く滞在できる仕掛けがほしいですね。佐倉城の本丸や大手門が素通りされるのはさみしいですから。
 行政に全部やれということではありませんよ。行政がある程度の指針を出し、それに沿って、民間はその能力を発揮できる場所で協力する。そして、行政はその民間のパワーをまとめていく。
 行政と民間ボランティアが一体になって支えあうことが、これからのまちづくりに求められていると思うのです。

新たなサムライの古径「ひよどり坂」

サムライの古径・ひよどり坂

佐倉武家屋敷(千葉県佐倉市宮小路町57番地)から徒歩1分

https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/sakuranomiryoku/1/3599.html

<佐倉武家屋敷までのアクセス>
〇京成電鉄・京成佐倉駅から徒歩約20分
〇JR佐倉駅から徒歩約15分
〇東関東自動車道佐倉インターチェンジから約20分
★駐車場:武家屋敷駐車場(武家屋敷閉館中は利用不可。台数に限りあり。)、または、佐倉城址公園自由広場駐車場(徒歩約8分)