“食”を佐倉の魅力に! 房総ジビエコンテスト最優秀賞の料理人の思い更新日:2020年02月21日

千葉県主催の「房総ジビエコンテスト」(2020年1月開催)で、佐倉市の料理人、亀井伸也さんが最優秀賞を獲得しました。亀井さんは京成佐倉駅近くの和食店「和み食 風流」の店主として、千葉県産を中心とした新鮮な野菜と、毎朝市場で仕入れた魚介を提供しています。2011年に都内からUターンし「“食”で佐倉の魅力を発信したい」とお店を開いた亀井さん。地元食材へのこだわり、一度離れたから感じる佐倉の魅力について聞きました。

地元の食材のおいしさを、再発見できるお店でありたい

――料理人を目指した思いを教えてください。
中学、高校時代から「料理人になりたい」と思っていました。父がデザイン関係の自営業をしていた影響もあり、サラリーマンになるイメージが持てなかった。ただ、デザイン方面には才能がなかったので、自分の好きなものを追求して生きていくしかない、と。では、好きな“食”の道に進もう、と短絡的な考えでした(笑)。

――地元佐倉で和食店を開いた経緯とは?
高校卒業後に佐倉を離れ、東京の大学に進学しました。そこでアルバイトをさせてもらったフグ料理店が太っ腹なところで、学生時代からお店の寮に入れてもらえたんです。面倒見てくれた感謝の気持ちもありましたし、フグの調理免許があれば使えない食材はないだろうという思いもあった。卒業後そのまま就職し、フグ調理師免許取得のため、修行を積みました。

その後、寿司屋でも経験を積み、店を独立した先輩を手伝うために再びフグ料理店で修業、家の事情もあって2011年に佐倉に戻ってきました。

当初は、佐倉で飲食店をやってうまくいくのか不安がありました。都心に比べれば人の流れは少ないからです。でも、たまたま“おやじ横丁”(京成佐倉駅前にあった飲食店が集まった屋台村のような空間)でスペースが空き、「試しにやってみようか」と席数10人ほどの「風流」をオープンすることに。すると、連日地元のお客様がたくさん来てくれたんです。小さいお店だからこそ、お客様の反応がダイレクトに返ってくる。おいしい!と喜ぶ表情に自信をもらい、今の店舗へと移転してきました。

――「風流」の特徴やこだわりとは?
佐倉に戻ってきてから「地元野菜を新鮮なまま食べるのが一番おいしい」と気づかされました。毎日市場で魚や野菜を自分の目で見て、いいと思うものを仕入れるようにしています。できる限り佐倉市産、千葉県産食材にこだわり、お客様にも「地元のものっておいしい」と再発見していただきたいと思っています。

――故郷を一度離れたからこそ感じる、佐倉にお店を構える魅力とは?
お客様との距離が近く、顔が見えるところが好きです。都心の大きい店舗では、料理を作ることに追われ、お客様とじっくり会話できないことも多くありました。今は、お出しした料理に対してすぐ感想が来るので、「本当においしいものを提供できていれば、お客様はついてくる」という実感を得られます。

また、お客様の紹介から、地元農家さんとの人脈も広がっています。「〇〇農園さんの野菜がおいしいよ」「新規就農の方がいい野菜を育てているよ」などといろいろな情報をくれるので、使いたい食材がどんどん増えていく。実際に農家さんを訪れると「この時期はこの野菜が旬」「この野菜はもう少し待った方がいい」とさらに詳しく教えてくれて勉強になります。これからも、佐倉の食の豊かさを、生産者と料理人とがタッグを組んで伝えていけたらいい。地元への思いはどんどん強くなっていますね。

素材の魅力を引き出し、伝えるのが料理人の役割

――海鮮料理を専門にしながら、2020年1月には「房総ジビエコンテスト」に出場。千葉県知事賞(最優秀賞)を受賞されています。なぜジビエに挑戦しようと考えたのでしょう。
このコンテストには「地元の食材を無駄にせずおいしく食べよう」というコンセプトがあり、そこに共感したんです。イノシシやシカは害獣と呼ばれ、駆除され捨てられがちです。それらを無駄にせずおいしく食べよう、という考え方が好きで、老若男女問わず「ジビエっておいしい」と思ってもらえるような一皿を作ろうと考えました。

――どんな作品を、どんな思いで作りましたか。
作ったメニューは、「イノシシの角煮の天ぷら 地元野菜を添えて」。ジビエはほとんど扱ったことがないからこそ、和食の考えを取り入れたら面白いかなと天ぷらを選びました。天ぷらなら好きな人も多い。ジビエ特有の「生臭そう」といった先入観がなく食べられるのではないかと考えました。

地元野菜をたくさん使うことにもこだわりました。例えば、天つゆに添えたのは、佐倉でとれた無農薬のビタミン大根。これは、食物繊維やカリウム、ビタミンCの含有量が、普通の大根の約30倍ともいわれる貴重な食材です。ほかにも、糖度が高い佐倉レンコンやニンジンを使い、野菜の甘みを味わっていただけるよう工夫しました。生産者さんは「普通の野菜だよ」と謙遜するのですが、ほかと食べ比べてもこれほどおいしい野菜はない。作ってくださった佐倉の皆さんのおかげで受賞できたと思っています。

最優秀賞「イノシシの角煮の天ぷら 地元野菜を添えて」(写真提供:千葉県農林水産部流通販売課)

――佐倉のおいしさを伝えるために、行っている活動はありますか。
地元の飲食店さんとは「佐倉イズム」というコミュニティを作って、いろんなイベントを企画しています。例えば「B.B.BASE」(東京と房総半島を結ぶ、自転車&サイクリスト専用のサイクルトレイン)で出す和洋中のお弁当をみんなで作ったり、「くさのねフェス2019」でブース出店したり。町内のお餅つきに飲食を提供することもありますし、今はサンセットヒルズ(※)での飲食イベントの企画も動いています。

2020年の目標は、グルメフェスを行うこと。房総ポークを一頭買いしてみんなで調理したら面白いね、などと議論しており、夢は広がります。

(※)印旛沼サンセットヒルズ:オートキャンプやバーベキューができるアウトドア施設
http://sunsethills.shiteikanri-sakura.jp/

――今後、佐倉をどんなまちにしていきたいですか。
佐倉に暮らして改めて、生活環境の豊かさを実感しています。自然が多くて人があたたかく、時間の流れがゆったりしている。都心にも約1時間で出られるという好立地です。

ただ、食に携わるものとして残念なのは「佐倉に行ったらこれを食べよう」という名物がないこと。食は、その地を訪れたいと思う重要な動機です。県内外から「佐倉にはおいしいものがたくさんある」と目指して来てくれるくらい、“食”を佐倉の新たな魅力にしていきたい。熱い飲食仲間と協力しながら、料理人として、佐倉の食ブランディングを高められるような活動をしていきたいですね。


和み食(なごみしょく) 風流
亀井 伸也

住所:千葉県佐倉市海隣寺町13-8
電話:043-308-7764
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房総ジビエ 特設サイト
https://bosogibier.com/