学び方改革!佐倉南高校「三部制の定時制の課程」更新日:2023年08月17日
午前部・午後部・夜間部のどのコースにするか。卒業まで3年かけるか、4年にするか。自分にぴったりの学び方を、生徒が選べる「三部制の定時制の課程」。
この新制度を、令和4年度から導入した千葉県立佐倉南高等学校。新しい学び方に飛び込んだ生徒や、手厚いバックアップ体制で生徒を見守る先生たちにインタビューしました。
佐倉市に芽吹いた「学び方の選択肢」にご注目ください。
学校に通えるのが楽しい
――まずは「三部制の定時制の課程」に進学して2年目のMさんにインタビュー。なぜ佐倉南高校の三部制に通おうと考えたのですか?
登校時間を、自分である程度自由に決められるのが魅力的だったからです。
中学時代はあまり学校に通っていなかったので、学校に長時間いるのが最初はちょっと慣れなくて。 だから、学校に通う時間が短時間で、先々、普通の学校と同じようなスケジュールでも通えるのはいいなと思いました。
――学校生活はいかがですか?
楽しいです! ちゃんと学校に通えるようになったのが、なんだかとても楽しい。
高校生になって、生活がずいぶん変わりました。こうして誰かと話すのが、あまり怖くなくなったといいますか。 学校に通っている時とか、お友達としゃべる機会が増えました。本や絵、ゲームなど趣味の話題で、よくある話です。けど、ちゃんと話せるようになったのが、大きく変わったところです。
「学び直し」ができる高校
――次に、佐倉南高校の金田校長、柴沼教頭、進路指導部の小川先生に話を伺いました。「三部制の定時制の課程」にはどんな生徒が通っていますか?
Mさんのように、登校できることが純粋にうれしいと言う生徒は多いですね。中学で休みが多かった子や外国などにルーツを持つ子にも、選びやすい高校と言えるでしょう。
生徒の性質や背景は多様です。全日制課程では学びにくさを感じる子は意外と多いのです。
だから、学校には1日4時間在席し、残りを仕事や余暇に活かせるならば通学できる。そういう生徒にこのシステムをうまく利用してもらい、「学び直し」をしてもらいたいです。成績がよく、資格取得に励む生徒もいますよ。
――「学び直し」とはなんでしょうか?
「学び直し」には2種類あります。ひとつは、小・中学校の学習をしっかりやり直すこと。ふたつめは、自分でなにかを考え、経験を積んでいくこと。「わかった」「できた」を積み重ねるのが大事なのです。
先生も試行錯誤で、基礎から学べるように教育課程や教材を工夫したり、入学後に生徒を見てから教材を手直ししたりしています。生徒も真面目に通う子が多く、授業をしっかりと聞いています。
三部制の定時制の課程
――「三部制の定時制の課程」とはどのような制度ですか?
基本形は、1日4時間。4年間の通学で卒業できます。
定時制と言えば夜間部のイメージが強いでしょうが、佐倉南高校の三部制は、午前部・午後部・夜間部の3コースから選べます。
また、本人が希望すれば、他部の授業を追加受講して1日6時間で単位を取得し、3年で卒業することもできます。その場合は、形式的には全日制と同じです。
「三部制の定時制の課程」の導入は千葉県で3校目、北総エリアでは初めてです。佐倉南高校はJR佐倉駅から徒歩圏内であり、校門前にバス停留所もあります。交通利便性は登校のネックになりがちですが、佐倉南高校はたいへん恵まれています。
そもそも就学時間に対するニーズは非常に高く、朝からの登校にハードルがあると感じる人は多いのです。そのような場合、始業時間を遅く設定できることは大きなメリットなのです。
――授業がない時間、生徒はどんな活動をしていますか?
生徒の多くがアルバイトをしており、就業体験を積んでいます。
体力・習慣的に無理な活動をせず、趣味に打ち込むなど、自分のペースで過ごす子もいます。 また、文化系部活動やスポーツクラブなど、ゆるいルールのもと、やりたい子が自発的に課外活動を楽しんでもいます。
――「三部制の定時制の課程」を令和4年から導入し、1年経ちました。この1年間はいかがでしたか?
この1年で、さまざまなニーズに応えられる体制ができました。
通学そのものを困難に感じる生徒は多いのですが、「通学できなかった子が学校に来ている」というシンプルな状況に、この学校の意義を実感しています。市役所や企業がバックアップしてくれる環境もでき、生徒たちは地域にも見守られています。
「学校に来られることがうれしい」と語る生徒が増えるよう、まだまだがんばりたいです。
高校で新たなスタートを
――佐倉南高校の先生たちは、いずれも熱心に生徒の通学・学習を支援していますね。
生徒にとってより意味のある、プラスアルファの活動に積極的に取り組む先生に恵まれています。課題を見つけて生徒が主体的に学ぶように、課外活動を行う先生も多いです。
生徒を決めつけない。悪いとただ怒るのではなく、落ち着いた学校生活を送れることを目標に、生徒指導しています。他の学校よりも、先生が生徒に寄り添っていると感じます。
――生徒にはどのような学校生活を送ってもらいたいですか?
生徒たちは、中学までの経験が少ない子が多いです。こだわりが強かったり、社会で自分を出せない子だったり。それも含めて個性ですけれど、本人は悩みますよね。
だから、自分のふたを閉じて長所を出せなかった子に、出せる場があるよと伝えたいのです。彼らが認めてもらえる場を提供したい。佐倉南高校の環境を活かし、3~4年間をより濃く過ごすことを願っています。
その結果、彼らが将来、自分らしく、好きなことを遠慮せずにやれるようになってほしいですね。
――今後の進路や学び方に悩んでいる生徒へ、メッセージをお願いします。
納得できない、うまくいかないと、中学校で感じている人もいるかもしれません。
けれど、そこでおしまいではありません。高校で新たにスタートを切れます。
「三部制の定時制の課程」も選択肢として考えてみてください。ここには、いろんなチャンスがありますよ。
千葉県立佐倉南高等学校
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