ジャズで生まれる、まちの活気と交流 ~ 佐倉城下町ジャズサーキット更新日:2019年04月25日

城下町のあちこちで、聞こえてくるジャズの音色…。
第4回の「佐倉城下町ジャズサーキット」が2019年4月14日に開催され、市内外の音楽ファンが訪れました。
2019年のジャズサーキットでは、世界的なサックス奏者であり、このイベントを立ち上げた一人でもある佐藤洋祐さんにより、地元佐倉の子どもたちによる「佐倉キッズジャズバンド」と、北海道十勝地方からやってきた「十勝J-HORNS」との共演も実現。
佐藤さんと、演奏した子どもたちにお話を伺いました。

「佐倉城下町ジャズサーキット」は、複数の会場で開催される多くのアーティストのライブを、自由に行き来しながら自分で選んで観ることができるサーキットイベント。今回はまちなかの3か所を会場で開催されました。

平成28年(2016年)から始まり、今回が4回目の開催。6組のアーティストが2回ずつステージを繰り広げ、観客は思い思いにお目当ての演奏を観て回ることができます。このイベントの監修をしているのが、世界的なサックス奏者である佐藤洋祐(ようすけ)さん。
ニューヨークで活動し、在籍したバンドがグラミー賞を2度受賞、世界各国で演奏するなど活躍されていましたが、2015年末、佐倉市に拠点を移されました。

城下町商店会をはじめとした地元のお店や有志の皆さんが、佐藤さんと一緒に企画し、実行委員会を結成。2016年に城下町で初めてのジャズサーキットを開催し、以後毎年開催されてきました。佐倉城下町ジャズサーキットは、様々な会場で演奏したり、昨年はオリジナルのテーマソングを制作、CDを作成するなど、進化を続けています。

そして今年、佐藤さんが主宰している「佐倉キッズジャズバンド」の子どもたちと、北海道からやってきた「十勝J-HORNS」(とかちジェイホーンズ)が、佐藤さんと一緒に演奏し、佐倉と北海道の子どもたちの交流が実現しました。

【佐藤洋祐さん プロフィール】
2008 年に渡米しニューヨークで活動。グレゴリー・ポーターの5人編成バンドにおいて唯一の管楽器奏者として在籍し、グラミー賞を2度受賞、ノミネートも4度果たした。数百にも上る世界各国のジャズ・フェスティバル等に参加、サックス奏者として世界的に非常に高い評価を得た。その後2015年末に同バンドを離れ、自己の音楽を追求すべく米国から日本の千葉県佐倉市に拠点を移し現在に至る。日本国内での音楽活動および海外でのジャズフェスティバルやレコーディングなどにも積極的に参加している。サックス・フルート・クラリネット プレーヤー、シンガー、作曲家、アレンジャー、教育者。

―なぜ佐倉に住むようになったのですか?

ニューヨークで8年活動したのですが、後半の4年はツアーで世界各国を回る生活だったので、アメリカに住まいを置く必要もないなと感じ、妻も日本人なので、それならば日本に住まいを置いていてもいいのかなと。それでどこに住もうかとなったとき、佐倉は成田空港にも近いし、かといって成田よりは東京に近く、いい雰囲気で風情もある。それで佐倉に住むことを決めました。

佐倉を拠点に空港から各国のツアーへ、という生活をしばらくしていましたが、1日、2日時間が空くと、佐倉の街を歩き回ってみたりしていました。そうしていると、日本に拠点を戻して、日本で活動していきたいなという気持ちがだんだん強くなってきて、バンドから脱退させてもらいました。自分が日本でやる、というきっかけをくれたのはこの街ですね。

もちろん仕事は東京の方が多いですけど、佐倉のジャズフェスティバルをもっと定着させたり、次の世代のミュージシャンがそれをしっかり引き継いでいけるように、まだまだ佐倉で活動をしていきたいなと思います。

―「佐倉キッズジャズバンド」を始めたきっかけは?

子どもたちが自由に演奏できる機会を作りたいと思ったことです。日本では当たり前かもしれないけど上下関係があって、もっとのびのび自由に演奏してほしいという思いから始めました。もちろんアメリカにもそうした関係が全くないわけではないですが、演奏中は対等だという感覚が強い。日本の子どももバンドの中では僕も含めてフラットな関係でできたらいいなと思います。月に1回程度、集まって演奏するんですが、子どもたちに教えるというよりも、自分の方が子どもたちに教えられることが多いと感じています。

―佐倉城下町ジャズサーキットへの想いは?

今まで、ツアーで回っていましたが、ステージに出るとたくさんのお客さんがすでにいて、ワーッと盛り上がるんだけれども、例えば僕が住んでいる隣の家のかたや、近所のかたが、果たして僕の音楽を聞いて本当に楽しんでもらえるのかな、と。ツアーを見に来ている1万人に聞いてもらうよりも、30人くらいでいっぱいになるような会場で、僕の生活に密着した人たちに楽しんでもらって、一緒にいい時間を持つことの方が、僕にとっては難しいし、すごく大きなチャレンジでもあります。
だから城下町ジャズサーキットにたくさんのお客さんに来てもらえているというのはすごくうれしいですよね。

―今回、「十勝J-HORNS」を呼んだ経緯は?

渡米する前は17年北海道に住んでいたので、北海道に知り合いのミュージシャンがたくさんいることから、何か一緒にやりたいね、と話していました。2019年度末で士幌町の佐倉小学校(※)が閉校になってしまうということを聞いて、これまで続いてきた千葉の佐倉と士幌との交流が、このままではなくなってしまう、ということで、ここでやらないと終わってしまったらもったいないと思ったんです。ジャズサーキットの中で実現できて、これがまた一つの契機となって、北海道との交流がもっと続いていけたらいいなと思いまし、今回実現できたことに満足しています。

(※)士幌町の佐倉小学校…北海道河東郡(かとうぐん)士幌町(しほろちょう)には「佐倉」という地区があります。最後の佐倉藩主・堀田正倫の養子である正恒が「佐倉農場」をその地に開設したことが、その由来です。正恒は入植者の子どもたちのために現在の士幌町立佐倉小学校を開校しました。現在でも、それぞれの佐倉小学校の児童がお互いを訪問するなど、交流が続いてきました。士幌町の佐倉小学校は、児童数の減少により、2019年度末で閉校することとなりました。

―「才能」についてどうお考えですか?
才能は特別なものじゃなくて、だれでも何か持っているもの。日本はカラオケとかでも点数が出たり、何が正しくて何が間違ってる、ということを言いがちですが、もっと自由でいい。やりたいことがのびのびできることが才能を開花することにつながるのではないでしょうか。

続いて「佐倉城下町ジャズサーキット」で演奏した子どもたちにも、お話を伺いました。


【十勝J-HORNS(とかちジェイホーンズ) プロフィール】
北海道十勝地方のジャズスクールで学んだTSUMUGIさん(Tp、写真左) とMONEさん(A.Sax、写真右) は、更に深くジャズミュージックを探求したいという意思から、2018年4月から大人たちと本格的な活動をはじめました。十勝を中心に活躍するミュージシャンの NANAさん(Pf)、GENさん(B)、HIROAKIさん(Dr)と共に活動しています。

TSUMUGIさん(高1)
北海道にはお城ってあまりないので、城下町というのが新鮮でした。武家屋敷やひよどり坂に行きましたし、佐倉は雰囲気がいいところだと感じました。本州で演奏すること自体初めてだったけど、演奏を楽しんでもらえてよかったです。

MONEさん(中1)
佐倉は、北海道とは景色が全然違います。ひよどり坂はトトロの世界みたい。佐倉の人はみんな親切で、いい人が多いです。町の中でジャズのイベントが開かれて、お客さんもたくさん来てくれて、一人のミュージシャンとして、うれしいです。


【佐倉キッズジャズバンド プロフィール】
2017年4月、地元佐倉の子どもたちがジャズを演奏する機会を作りたいと、佐藤洋祐さんが呼びかけ、「佐倉キッズジャズバンド」を立ち上げました。月1回みんなで練習しながら、いろいろなイベントでも演奏。今回は佐倉城下町ジャズサーキットのメインイベントに初めての参加となりました。

畠山藍匠(はたけやま・あいしょう)さん(小6)(ベース・ボーカル、写真中央右)
緊張して間違えたこともあったけど、最後はうまくできたので、よかったと思いました。
ジャズはアドリブができるのがすごくいいなあと思います。まだアドリブはできないけど、できるようになりたいです。

畠山桂綸(かりん)さん(小4)(ギター・ボーカル、写真中央左)
最初のうちは緊張してうまくできなかったけど、最後は楽しんで演奏できました。
楽器は幼稚園の時にウクレレとかやってたんですけど、ギターは初めて。ジャズのギターは自分でリズムを作ったりしないといけないから難しいです。

佐倉城下町ジャズサーキットでは、どの会場もお客さんでいっぱい。全部で6組のミュージシャンが、それぞれの演奏を繰り広げ、観客を楽しませました。


うすいなおこトリオ


飯田久美子 with 阿見紀代子カルテット


鳳聲晴久トリオ


マリBUNKOシャンソンデュオ


尚美ミュージックカレッジバンド“SHOBI JAZZ MESSENGERS

佐倉城下町ジャズサーキット ホームページ
http://sakurajazz.link/
(2019年のイベントは終了しています)