日本の伝統を次の世代に!和楽器奏者、藤田和也さんインタビュー更新日:2021年01月04日

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」にも出演した和楽器奏者の藤田和也さん。佐倉の秋祭りでお囃子(※)を始めた藤田さんは、現在、歌舞伎の笛方などを務めています。
幼少期からお囃子という日本の伝統が身近にあった藤田さん。小中学生への和楽器の普及や、消滅してしまった地方のお囃子の復活などにも取り組んでいます。
和楽器への想いと生まれ育ったまち・佐倉の魅力について語ってもらいました。

(※)太鼓や笛、鉦(かね)などの和楽器を用いて演奏する邦楽のスタイル。お祭りでは、山車(だし)や屋台(佐倉では御神酒所(おみきしょ)という)に乗って演奏する。

邦楽の道へ

―大河ドラマに出演されたそうですね。エピソードなどお聞かせください。

はい。直近では、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」に出演し、邦楽の演奏を行いました。大河ドラマは、時代考証がしっかりしていて、楽器だけでなく、身にまとう衣装の色なども、昔の絵巻物を参考にしているそうです。今回の「麒麟がくる」で着た衣装は、ネオンカラーのようなとても明るい色で印象に残っています。
他にも大河ドラマには、関わらせていただいていて、「軍師官兵衛」や「麒麟がくる」で、太鼓や法螺貝の効果音なども担当しました。

―藤田さんの取り組む邦楽について、簡単に教えてください。

日本舞踊・歌舞伎で笛の演奏がメインですが、時季になると都内のいろいろな神社でお祭りのお囃子演奏を行います。他にも、テレビの効果音を収録したり、ミュージカルや演劇などで笛を吹いたりと幅広く取り組んでいます。
和楽器というと大人数の演奏をイメージしますが、ギターと篠笛2人で演奏したりもします。意外かもしれませんが、篠笛は、ポップスにも合わせることもできるんですよ。
和楽器をいろいろな人に知ってもらいたいので、呼ばれればどんな場所にも行くスタンスで向き合っています。

―なぜ邦楽の道に進もうと考えたのですか?

小さい頃から日本の文化が好きで、テレビで歌舞伎を観たりしていました。また、生まれも育ちも弥勒町。物心ついたときから、お祭りの衣装を着てお囃子をしていました(笑)
町内のお囃子で笛を始めたのが中学生の時で、高校で進路を決める時、笛で東京藝術大学に行きたいと思ったのがきっかけで、本格的に歌舞伎囃子の笛を家元の下で習いはじめました。
大学では、歌舞伎の笛を専攻しました。というのも祭囃子は東京藝術大学をはじめ、専門科目で教えている大学は有りません。お祭りのお囃子は、笛も太鼓も全部の楽器を演奏しなければなりませんが、歌舞伎は、楽器ごとの専門職に分かれていて、笛は笛方(ふえかた)と呼ばれています。

秋祭りでのお囃子の演奏

―和楽器奏者としてのやりがいは何ですか?

和楽器を聞いたことがない人、見たことがない人や漠然と知っているだけの人が、「篠笛って、こんな音が出せるんだ」とか新しい発見をしてくれたときは、とてもうれしいですね。そういうとき、お客さんの顔はキラキラしているんですよね!
それと仕事柄、各地の劇場やホールに行ったり、海外で演奏する機会もありますが、いろいろな場で演奏できることは、とても新鮮です。

演奏で使い分ける篠笛

伝統芸能を伝えたい!

―邦楽という、日本の伝統の音楽にどのような思いで携わっていますか?

畳がフローリングになり、正座をする機会って減っていますよね。そうした生活様式や作法が変化するなかで、日本の伝統文化も次の世代に残さないといけないと感じています。そのためには、いまの人たちに先人が残してきた知恵や所作(作法)を、芸能を通して伝えられればと思います。
佐倉と東京でお弟子さんの指導をしていますが、そのような思いで向き合っています。

―芸能が途絶えてしまった囃子や踊りの復活にも関わっていますよね。

はい。いま、年間100以上の芸能が地域から消滅していると言われています。とくに地方のお祭りでは、和楽器奏者が足りず、演奏をテープで代用していることもあります。
具体的に関わった事例として、飛騨高山のお囃子を保存するために、ワークショップの講師として子どもたちに、地域の伝統の大切さを伝えてきました。
こうした伝統芸能の復活や保存については、譜面を起こして、録音して、地域の人が演奏できるようになるまでを一連の流れとして、活動していきたいと考えています。

佐倉での稽古風景

佐倉の魅力

―生まれも育ちも城下町・佐倉。小さい頃の思い出を教えてください。

秋祭りでは、ずっとお囃子をやっていたので、露店で物を買って食べた記憶がありません(笑)。お祭り一筋だったと思います。
小さいときから、ボーイスカウトのキャンプで、印旛沼などの自然と触れ合って生活したことも良い思い出です。佐倉は、自然と都会が入り混じっているところが良くて、小学校の時は友達と自然の中で遊んでいました。

―佐倉の魅力って?

一息つけるところです。私の拠点は東京にありますが、今でも、地元・佐倉に帰ってくると落ち着きますね。
それと、建物や芸術など文化が残っている面も魅力だと思います。芸術家で佐倉出身の方も多いですよね。佐倉は、芸術関係が強い素地があるのかもしれません。

■藤田和也さんプロフィール

1989年、佐倉市生まれ。東京藝術大学卒業。
幼少から佐倉の秋祭りで地元町内のお囃子に加わる。
現在は、日本舞踊や歌舞伎公演の演奏を中心に活動。
子どもたちに和楽器の魅力を伝える活動にも従事している。

藤田さんホームページ

■佐倉の秋祭りダイジェスト

佐倉市公式チャンネル「さくら動画配信」