仕事も趣味も食べ物も、ここにモチヨル!~まちの価値を高める佐倉家守舎のまちづくりへの想い~更新日:2020年09月03日
公共空間を活用したmochiyoru(モチヨル)を主催し、リノベーションまちづくりに取り組むまちづくり会社の佐倉家守舎(さくらやもりしゃ)。メンバーのひとり、榊田さんが語る熱い「まちへの想い」とは?
まちの期待値を上げる!
―「mochiyoru」とは、どんな取り組みですか?
mochiyoruは、京成佐倉駅南口駅前に向かう一方通行の道路の、2車線のうち1車線の道路使用許可を取り、気軽に立ち寄れる路上空間を作り出す取り組みです。そこでは、キッチンカーや周囲のお店でテイクアウトしたものを飲食したり、くつろいだり、地域の人とコミュニケーションしたり、思い思いに過ごすことができます。
これまで、仕事とか、趣味とか、飲食などは、施設内のクローズした空間で完結することが多く、なかなか表に見えてこないのが課題でした。
佐倉には、いろいろな趣味やノウハウを持っている人がいっぱいいます。そういう人たちの交流できる場を作って、新しい地域産業を作りたい。そのために、道路という屋外の公共空間を活用して、交流する場を設け、仕事や食事や趣味を持ち寄ってほしいと思い、mochiyoruの取り組みを始めました。
mochiyoruを継続的に開催することで、まちの価値を「見える化」させていきたいと考えています。外にいろんなものが表出してくると、情報が交流し、新しい地域産業が生まれます。まちが面白くなってきていることを可視化したいと思います。そうすることで、このまちに来たい、このまちで事業をやってみたいと思う人が増え、まちの期待値を高めることにつながります。
実際、mochiyoruの場でつながった方たちが新しい事業を展開したこともあります。
また、佐倉で事業を始めたい人からも相談を受けてもいます。mochiyoruをやることで、いろんな人たちの交流が加速しているように感じます。
―榊田さんがメンバーの一般社団法人佐倉家守舎について教えてください。
簡単に言うと、民間のまちづくり会社です。
まちづくりというと、行政が主導で行うイメージが強いですが、佐倉家守舎は行政から完全に自立しています。
持続可能な豊かな日常づくりが最大の目的で、地域経済を回し、地域を豊かにしていきたいと考えています。半径200mの小さなエリアを対象としてエリアマネジメントを行い、そこで稼いだお金を、まちづくりに再投資していきます。まちの不動産オーナーとそこで事業をやりたい人をつなぐ役割も果たします。
―榊田さんは市の職員でもありますが、なぜ佐倉家守舎を立ち上げたのですか?
市職員のリスクって、人事異動だと思います。まちづくりとはまったく関連のない部署に異動することがあり、ずっと仕事で携われない。でも、まちづくりに関わっている民間の方って、市の部署と仕事をしているんじゃない。人と人で仕事をしているんですよ。だから、民間の方と信頼関係を保ち、覚悟をもってまちづくりを行うため、佐倉家守舎をつくりました。(※)
―佐倉家守舎が進める「リノベーションまちづくり」とは?
一言でいうと、「民間主導、行政支援のまちづくり」です。
人口や税収が減少する縮退社会には、民間の稼ぐ力を最大限に活用しながら、今ある空き家のような空間資源や人的資源・歴史的資源などを使い、地域の課題を解決していくことが重要です。
これまでの行政主導のまちづくりとの一番の違いは、行政の役割だと思います。リノベーションまちづくりでは、パブリックマインド(自分の住むまちを良くしたいという気持ち)をもった民間がまちづくりを行いやすいように、行政は規制緩和などで、民間の取り組みをサポートすることが重要になってきます。
パブリックマインドをもった民間は、まちへの相当な想いを持っています。行政は、そうした民間の想いに応えてほしいと思います。
リノベーションまちづくりという動きは、北九州市、熱海市、和歌山市など日本各地で芽生えています。そうしたまちでは、地域の潜在価値を高めることを徹底し、都市経営課題をどう解決するか戦略を立て、パブリックマインドを持った民間を巻き込むことで成果を上げています。
(※)地方公務員法第38条に規定する兼業の許可を得て、まちづくりの活動をしています
まちにダイブ!
― 一番のやりがいを教えてください。
mochiyoruをやっていて、地域の人やその場に来た人から反応が返ってきたときですね。来た人が楽しんでいる様子を見たとき、やっていて良かったと思うし、「まちの可能性があるんだな」と実感します。
―リノベーションまちづくりで一番大切にしていることは何ですか?
まちを歩いて、まちの変化を常に自分の身体として感じることが重要です。まちの変化や兆しは、まちを歩いて初めて感じることができるので、まちに「ダイブ」して、いろいろな人と話したり飲んだりしています。
新しいお店ができたら、なぜこの場所にお店を出したか聞いてみる。まちを歩いて空き家が目に入れば、何かに使えないか考える…どういう人がいて、そこにどんな背景があるのか、まちにダイブしなければわかりませんし、ダイブしてまちを感じることで、このまちでお店をやりたい、新しい事業を起こしたいという人に、ここがどんなまちなのか説明することができます。
―今後、どのような展望がありますか?
空き店舗と道路の活用をセットにした事業を模索していきたいです。そして、今の空き家を少しずつ埋めていき、まちの期待値を高めていければと思います。
将来的には、自分の子どもが地元を好きになって、大きくなっても佐倉に住みたいと思ってくれるようなまちづくりができれば最高ですね。
―佐倉の魅力について教えてください。
いつも聞かれるんだけど、パッと出てこない(笑)
だから、パッと答えられる魅力を自分たちでつくっていきたいし、それをつくるのも僕らのまちづくりの目標のひとつだと感じています。
佐倉には、面白い人たちがたくさんいて、掘れば掘るほど出てくるので、そういう人たちといろいろな場でつながることができるのが魅力と言えますね。
―最後に、まちづくりに関心がある人へアドバイスをお願いします!
大事なのは、小さなことでもいいから、まずやってみること。やらなければ何も変わらないし、課題も何も見えてこない。失敗したら問題を見つけてまた別のことをやる。その繰り返し。僕たちの家守舎は、それを実践しています。
まちには、多様性があった方が面白い。佐倉のいろいろな場所に、それぞれの価値観をもったまちづくり会社ができて、エリアマネジメントをしていってもらいたいですね。
mochiyoru出店者にお話を伺いました!
―mochiyoru会場に面したイタリアンレストランTrattoria Noce服部さん
道路を活用することで、普段とは異なるスタイルで、日常にない時間を過ごせる特別な感覚があります。お客さんにとっても、訪れる口実になる良い機会なので、普段お店で出していない料理を出したりしています。
これからも定期的に開催できればいいですね。続けることで地域の方にとっても、ここがチャレンジしたいと思える場になるんじゃないかと思います。
一般社団法人 佐倉家守舎
「まちのヒト・コト・モノを紡いで、まちに変化を生み出す」をポリシーに、3人の有志により設立。2020年6月に一般社団法人となる。現在、持続可能な豊かな日常づくりを目指して、空き家活用や公共空間利用などの取り組みを行っている。
また9月1日に佐倉家守舎とイオンタウン株式会社が連携し企画したシェアアトリエ「ふわいえ」がイオンタウンユーカリが丘東街区3階にオープンした。
https://www.facebook.com/fuwaie/