
「静寂の中に咲く夢 ―世界が認めた佐倉のバラ園」 ~グレッグ・ローリーさん寄稿~更新日:2025年07月23日
バラへの情熱に導かれ、世界中の庭園を訪れてきた私にとって、この場所は特別な意味を持っています。緑に包まれた静寂の中で、控えめな色彩のバラたちが優しく語りかけてくる――そんな佐倉のバラ園の魅力を、皆さんと分かち合いたいと思います。

世界トップレベルのバラ・ロザリアン(※) グレッグ・ローリーさん
(※) バラ・ロザリアン:バラを愛し育てる人のことを指す言葉。日本ではバラ栽培を趣味とする人々の間で親しまれている呼び名。
2025年5月の佐倉草ぶえの丘バラ園訪問
今年(2025)の5月、私は福山で開催された世界バラ会連合の会議に出席するために日本を訪れました。この機会に、私が日本で最も好きな場所である「佐倉草ぶえの丘バラ園」を2度訪れることができました。
私の若い頃からの情熱はバラでした。その情熱は、野生種やオールドローズの大規模なコレクションを作り、苗木園を開き、最終的にはバラの保存を支援する非営利団体を設立することへとつながりました。
何年も前、佐倉のバラ園がオールドローズを探していたとき、私は自分のコレクションからいくつかを提供する機会を得ました。訪れるたびに喜びを感じます。このバラ園には世界中から贈られた多くのバラが植えられており、私たち皆が「日本の我が家」と呼べる夢のような場所でつながっています。

では、このバラ園をこれほどまでに特別で美しいものにしているのは何でしょうか?緑の森に囲まれ、まるで空中に浮かんでいるかのようです。これほど広く、これほど多くのバラがあるにもかかわらず、私が知る中で最も静寂に包まれた庭園です。
訪れるすべての人が、その静けさに包まれます。地平線には緑が広がり、やわらかなピンク、淡いクリーム色、白が点在しています。深く静かなラベンダーやモーブの色合いが、山の霧のように庭園を流れていきます。白い花びらが森の中できらめき、舞うのです。強い色彩であふれる庭園ではなく、むしろ色彩が控えめな庭園です。
だからこそ、野生のバラたちが自然に溶け込み、異質な存在ではないのです。

私はそこで、かつての友人たち—花々と人々—を思い出しながら、時を忘れます。世界中を見渡しても、日本の庭園美学とこれほど調和するバラ園は他にありません。日本がこの庭園をこれからも愛し、 大切にしてくれることを願っています。また必ず戻ってきます!
【グレッグ・ローリーさんプロフィール】
ヘリテージ・ローズ(※)基金(HRF)の創設メンバーで、2005年から2015年まで出版担当の副会長を務める。
2005年にはカリフォルニアのバラの歴史に関するHRF会議をエルセリートで主催した後、他の編集者たちと共にHRFの機関紙、ロサ・ムンディ(Rosa Mundi)を考案し、発刊。また、世界のミステリーローズ(Mystery Roses Around the World)の共同編集も行った。
2012年には、歴史的なバラのコレクションを非営利団体である「The Friends of Vintage Roses」に譲渡した。この団体は、バラを教育的、文化的、科学的価値のために保存することに献身しており、バラを保存するために共同の使命を掲げ、他者と協力し共有する活動を行っている。
(※) ヘリテージ・ローズ:オールドガーデンローズ(1867年以前に分類された品種)、世界各地の野生種 のバラ、歴史的・文化的価値が高く人類の遺産として保存すべきバラ等を指す。

【佐倉草ぶえの丘バラ園】
■ 所在地 千葉県佐倉市飯野820(佐倉草ぶえの丘内)
■ https://kusabueroses.jp/
■ TEL:043-485-7821
■ ローズフェステイバル開催時期(例年):5月第2土曜日〜5月最終日曜日、秋も色とりどりのバラが楽しめます。