寺子屋体験もできる!日本の歴史と文化が詰まった「歴博」とは?更新日:2018年08月16日

1983年の開館以来、人々の生活を辿る歴史や文化の関連展示物を公開してきた「国立歴史民俗博物館」。研究機関としての歴史も長く、最新の研究成果に触れられるという特徴もあります。広報連携センター長であり、理学博士の齋藤努さんに、博物館の楽しみ方や佐倉の魅力について話を伺いました。

Q「国立歴史民俗博物館」ってどんなところ?

1983年に開館した国立歴史民俗博物館、通称「歴博(れきはく)」は、日本の歴史と文化について総合的に研究・展示する歴史民俗博物館です。日本列島に人類が現れた数万年前(旧石器時代)から現代までの歴史と文化に関する資料が展示されています。保管されている約25万点の資料のうち、展示されているのは約10,000点。一般の人々の歴史と文化に触れることを目的としているため、歴史の博物館でありながら、教科書に出てくるような有名人はほとんど出てこないのが特徴です。

総合展示(第3展示室)/国立歴史民俗博物館/常設展示/上野広小路接近

歴博は、「博物館機能を持った研究機関」という独自の特徴を持っています。設立当初から、大学共同利用機関として、全国の大学のほか、さまざまな研究機関や行政組織の研究者たちが資料や研究情報を共有し合い、現在も約40名の研究者が歴博で研究を深めています。文献史学、考古学、民俗学、美術史学、自然科学、情報科学といったさまざまな分野の研究者たちが集まっている上に、ふだんから日常的に会話も交わしあっているので、互いの知見を合わせて新たな成果を生み出すことが容易な環境にあります。最新の研究結果は博物館で展示され、一般の人向けに分かりやすく解説されているのも、歴博の魅力のひとつです。

企画展示にも力を入れており、開催の3年前からいろいろな分野の研究者が集まり企画を練っています。近年で話題になったのは、2015年に開催した「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史-」。ニセモノ・コピー・フェイク・イミテーションなどがいかに作られ、歴史や文化に貢献してきたのかに焦点を当てたユニークな試みで、歴史学、民俗学、考古学、人類学など、いろいろな分野の垣根を飛び越えて紹介できたことは、歴博ならではの取り組みだったといえるでしょう。

Q なぜ佐倉市にあるの?

候補地には、「東京周辺で便利な場所にある」「歴史的な背景がある」「十万坪の無償の土地がある」という厳しい条件がありました。佐倉市以外にも候補はありましたが、国立の歴史博物館という性格上、全国から資料を収集、保管、調査研究するためには東京から近いことが重要でした。江戸時代に佐倉城があった歴史的な背景も決め手となり、現在地での建設が決まったといわれています。

Q どんなお客様がいらっしゃるの?

佐倉市や千葉県内のお客様を中心に、歴史好きな方はもちろん、学生や家族連れの方も多くいらっしゃいます。入館者数のうち多くを占めているのは、小中学校の団体さん。そのため、子どもたち向けの教育プログラムも充実しており、れきはく子どもマップや、れきはくこどもワークシート(展示物の閲覧チェックシート)などが用意されているほか、博物館のスタッフによるテーマごとのガイダンスや体験プログラムもあります(学校からの要望に応じます)。

常設の体験コーナーとして人気なのは「寺子屋れきはく」。寺子屋を再現した場所で、簡単なワークシートを使った「手習い帖」に江戸時代の地名を書いたり、双六で遊んだりできます。ボランティアスタッフさんたちと交流できるのも、歴博ならではの体験かもしれません。ほかにも、「たいけんれきはく」という部屋では、食事キットで中世の人の食事をもりつけたり、土器パズルを組み立てたりできます。夏休みにはファミリープログラムとして、展示室内でのスケッチや、鋳造体験、弥生時代の衣装体験なども用意されています。

博物館であり研究機関でもあるという性格上、開館当初は「歴史に詳しくて、勉強熱心な人だけが来てくれればいい」という考え方もあったそうです。しかし、博物館はできるだけ多くの方にご覧いただかなければ意味がありません。そこで、体験型のコーナーを設けたり、企画展示ではお子さんでも楽しんでいただけるようなユニークな試みにチャレンジしたりと、いろいろな工夫を積み重ねてきました。これからも、「今度の休日は、博物館にでも行ってみようか」と気軽に出かけていただけるような親しみのある場が作れるよう、知恵をしぼっていきたいと思っています。

Q 佐倉市の魅力とは?

東京からのアクセスがよく気軽に来られる場所でありながら、都心にはない豊かな自然、のんびりした時間の流れ、人のあたたかさに触れられるところです。歴博で研究を進めている教員たちは、韓国や台湾、ドイツやオーストリアなどとも共同研究をしており、海外に行く機会が多いことから、成田空港に近いという立地も非常に便利です。

歴博のほかに佐倉市には美術館も多く、毎年佐倉城址公園で行われる「にわのわ アート&クラフトフェア」の来場者も年々増えています。文化に触れる機会が多いのは、子どもを育てる環境としても魅力的だなと思います。