子どもが主役のまち「ミニさくら」って知ってる? NPO子どものまちが取り組む子育て支援更新日:2019年02月04日

年に一度、佐倉市中志津の商店街に誕生する「ミニさくら」は、子どもたちだけの遊びのまち。ドイツの「ミニ・ミュンヘン」という活動をモデルに、2002年から継続的に開催されています。「ミニさくら」が目指すのは、自分で考え、決めて、行動できる人を育むこと。その思いや活動内容について、運営事務局であるNPO子どものまちの金岡香菜子理事長にお話を伺いました。

「ミニさくら」ってどんなまち?

飲食店、デパート、郵便局、放送局、ネイルサロン、プラネタリウム…。まるで本物のまちのようにさまざまなブースが並ぶ「ミニさくら」。ここで市民登録をした子どもたちは、好きな仕事(遊び)をして給料(モール)をもらい、買いものや食事をして楽しみます。

まちのルールを決めるのも、どんなブースを出店するかを考えるのも子どもたち。子どもスタッフとして「まち会議」に参加し、話し合いやフードの試作などを行ないます。大人サポーターのサポートはありますが、基本的に大人の口出しは禁止! 規則を破ると子どものまちの警察に逮捕されることもあるのだとか。

17年目を迎えた2018年は3月23日〜25日の3日間開催され、0〜18歳までの累計900人以上が参加。拠点とする志津地区に住むファミリー層を中心に、毎年おなじみのイベントとなっています。

<「ミニさくら」での遊び方> 
①受付で市民登録して、市民カードをもらう

②しょくあん(職業案内所)でやりたい仕事を選び、しごとカードをもらう

③仕事を好きな時間だけする

④仕事をした時間に応じ、銀行で給料(モール)をもらう

⑤別の仕事をしたり、買いものや食事をしたり。モールが貯まったらお店を開くことも!

自分が子どもの頃に感じたワクワクを、次の世代へ

「ミニさくら」を運営するNPO子どものまちは、20〜60代という幅広い年代の理事で構成された組織。商店街の一角で「えんがわカフェ」「まちの縁側ごはん」などの手作りカフェを運営する活動も行なっており、高齢の方や佐倉市に越してきたばかりの子育て世代が集まる交流の場になっています。

理事長の金岡香菜子さんは佐倉市出身の20代。「ミニさくら」に初めて参加したのは小学生の頃だったそう。最初は一市民としてでしたが、その翌年から18歳まで子どもスタッフを歴任し、高校生で理事、大学生で理事長に就任したといいます。

社会人になってからは、会社勤めと並行して活動に取り組んできた金岡さん。その背景にはどんな思いがあったのでしょうか。

特定非営利活動法人NPO子どものまち 理事長 金岡香菜子さん

―小学生の頃からずっと「ミニさくら」に携わっているのはなぜですか?
金岡:子どもスタッフとして参加していた頃は、純粋にとても楽しかったんです。自分たちだけでいろんなことを考えたり決めたりできるので、「こんなにおもしろいことがあるんだ!」と思っていました。

大人になった今は、「ミニさくら」を通じてどんどん成長していく子どもたちを見るのが楽しいですね。おとなしかった子がみんなを取り仕切るようになったり、私の話を聞かずにずっと喋っていたような子が、子どものまちの市長になって困りごとを解決しようとしたり。私自身も「ミニさくら」で社会性を養いましたし、その経験が実際に社会で役に立っていると感じることは多々あります。

―理事長のお仕事をしながら会社勤めもされているそうですね。
金岡:東京で人材業界の営業を6年していました。営業先への移動時間に子どものまちの仕事をしたりと、すごく忙しい毎日でした。少し休んだらまた次の仕事を始める予定ですが、それまでは心おきなく子どものまちに専念したいなと思っています。

―教育関係のお仕事には就かないのですか?
金岡:よく聞かれます(笑)。「子どもが好きなんですね」とか「なぜ先生にならないの?」とか。でも、子どもが特別好きなわけではなく、私にとっては子どもも大人もひとりの人間。教えたり導いたりするよりも、一緒に楽しく遊びながらお互いに成長していくことにやりがいを感じるんです。

「ミニさくら」で子どもと接するときも、子ども自身の考えを引き出すことを大切にしています。「どういうやり方があると思う?」と問いかけたり、引き出しが何もなければ「昔はこういうやり方もあったけど、どれが合うと思う?」と判断材料を提示したり。この経験は会社で後輩に接するときにも役立ちました。

10年、20年先の子どもたちに、「ミニさくら」を残したい

子どもたちだけでまちをつくる「こどものまち」プロジェクトは全国各地で行なわれていますが、なかでも「ミニさくら」はその先駆け。「ミニさくら」を研究対象にした論文や取材のオファーも多く、2007年には第1回目の「こどものまち全国主催者サミット」が佐倉市で開催されました。

金岡さんもまた、各地の団体や自治体から依頼され、NPO子どものまちの活動内容や教育に関する講演を行なっていたことがあるそう。パイオニアである「ミニさくら」への注目度の高さがうかがえます。

―そもそも佐倉市で「ミニさくら」が始まったきっかけは?
金岡:モデルになったドイツの「ミニ・ミュンヘン」は、夏休み中の3週間だけミュンヘン市に誕生する仮設都市。40年前に始まり、今では1日2000人が参加するほどの大規模なイベントです。当時学生だった「ミニさくら」の発起人は、「ミニ・ミュンヘン」を見て同じような活動を地元佐倉市でもやりたいと考え、仲間たちと一緒に活動を始めたそうです。

実は私も中学生のときに「ミニ・ミュンヘン」に参加しました。「ミニさくら」の活動の一環で、子どもを2人だけミュンヘンに連れていくという企画があり、作文や面接をがんばって2人のうちの1人に選んでもらったんです。親以外の大人と海外に行くなんて初めてだったので、1日目に熱を出すなどハプニングもありましたが(笑)、「ミニ・ミュンヘン」をこの目で見てすごくワクワクしたのを覚えています。

―17年続いてきた「ミニさくら」ですが、新たにチャレンジしていることはありますか?
金岡:拠点のある志津地区以外の子どもたちにも参加してもらえるように、活動の認知度を高めることが今の目標です。2018年度からは「ミニさくら」の1日バージョンとして「ぷちさくら」をスタート。12月に京成線臼井駅前の商業施設「レイクピア ウスイ」で、志津地区以外で初めての出張開催をしました。

レイクピア ウスイで開催された「ぷちさくら」の様子

金岡:「ミニさくら」に参加する子どもたちを近くで見ていると、自分で考えて判断する力がどんどん身についていくのがよくわかります。でも、成果がはっきり見えるまでには時間がかかりますし、数値で表せるものでもありません。学校や習いごとで忙しい子どもたちに参加してもらうには、本人に「楽しそう!」と思ってもらうことと、親御さんにメリットを理解していただくことが重要。そのためにも、気軽に「ミニさくら」に触れていただける機会をもっと増やしていきたいです。

―最後に、次回の「ミニさくら2019」に向けて意気込みをお願いします!
金岡:子どもたちに楽しんでもらうことが何よりの目標。今は子どもスタッフ30人くらいが毎月集まり、全体のテーマやブース内容を決めている最中なので、余計な口出しはせずに(笑)全力でサポートしたいと思っています。

佐倉市は人もまちもとても穏やか。あくせくすることなく、のびのびと成長できるまちだと思います。10年、20年先の子どもたちにも「ミニさくら」で楽しみながら成長してもらえるように、活動をしっかり継続させていきたいです。

ミニさくら2019 開催概要
→本イベントは終了しました

<日時> 2019年3月22日(金)〜24日(日) 10:00〜16:00
<場所> 佐倉市中志津中央商店街
<参加費>500円(3日間有効)
<対象> 18歳までの子ども
<主催> 非営利活動法人NPO子どものまち    http://kodomonomachi.main.jp