さくら咲クリエイション ~佐倉南高校×行政×地域産業プロジェクト~更新日:2024年11月07日

 「三部制の定時制の課程」という特色あるカリキュラムを持つ千葉県立佐倉南高校。学官民連携に意欲的な同校では、新しいキャリア教育を目指し、令和5年度から『さくら咲クリエイション』という新プロジェクトを始めました。
 生徒たちが地域協働しながら「創造」を目指した1年間を追ってみました。

さくら咲クリエイションとは?

――まずは『さくら咲クリエイション』のプロジェクトリーダー、進路指導部の小川先生に話を伺いました。このプロジェクトを始めたきっかけは何ですか?

 佐倉南高校は令和4年度から三部制定時制に移行しました。課程が変わると、生徒層も変容し、現在は、多様な背景を持つ生徒が通っています。彼らにフィットしたキャリア教育を、このプロジェクトでは目指しています。
 新たな学校になれば、新たな教育の形が求められるものです。校訓でもある「創造」(=クリエイション)により得られるものは大きく、学校生活に創造を生み出す必要性がありました。しかし、日常的に顔を合わせる教員と生徒だけでは、創造に限界があります。
 そこで、生徒が地域の人材や産業と出会い、コラボレーションしていけば、新たな価値が生まれると考えました。学校の枠を超え、生徒が地域とも連携していくことを目指していきます。

――『さくら咲クリエイション』の年間計画を教えてください。

 プロジェクトの幹となる企画は、次の3点です。
 1つめは、1年次に行う『クリエイティブ先生s』。令和5年4月に実施しましたが、地域の大人を学校に招き、講演してもらいます。生徒は、講師の話から生き様を学ぶとともに、地元の価値に気づいていきます。
 2つめは、2年次に行う『クリエイティブ高校生s』。前段の『クリエイティブ先生s』で得た気づきを元に、まちの課題を発見し、解決プランをつくって発信していく。令和5年度は11月に「産業大博覧会」に参加しました。
 3つめは、3年次の『クリエイティブストーリーズ』。情報発信を学んだ3年生が、これまでの取組みをまとめ、1、2年生を対象に自分がやってきたことをプレゼンテーションします。上級生から下級生へと、創造が生き生きと積み重なって、生徒たちの間でまわっていくのです。
 この3つの幹がある先に、地域の人たちとの出会いで生まれる枝葉が生えていき、自律分散的に、まちの協同が生み出されていくと考えています。

『さくら咲クリエイション』プロジェクトリーダーの小川先生

――いろんな企画を準備しているのですね。

 まちを良くしたいと感じていても、高校生にはきっかけがない。良くしたいなら考えろと言われても、一人では無理ですよね。
 けれど、例えば『クリエイティブ高校生s』の「課題発見ワーク」で行った「レゴ®シリアスプレイ®」のように、レゴを使って作業をしながら、他の人たちの意見を聞くことは、合理的かつ効率的だと考えます。ツールがなく、言葉だけでは難しいこともありますから。
 これらの企画をきっかけにして、生徒にまちを見る視点が生まれることを期待しているのです。

これが『さくら咲クリエイション』だ!

 『さくら咲クリエイション』では、各学年が年間計画に沿って、地域の人々と連携して活動を積み上げていきます。
 ここでは、令和5年度から一年かけて行われた『さくら咲クリエイション』の個別企画をご紹介します。

 最初に市役所職員の講義を受けて佐倉市の課題を感じ取り、次に、「レゴ®シリアスプレイ®」でレゴを使ってアイディアを出し、ものを作っていく過程を体験しました。
 手を動かし、クラスメートに説明することを経て、生徒たちが心ではいつも感じていても表には出てこない考えや、新しいアイディアが引き出されたようです。

自分がイメージするまちの姿をレゴで造形し、互いに説明、質問しあいます。

 「佐倉市を若者にとって魅力的なまちにするためには?」をテーマに、2年生が1年かけて取り組んできたことを、令和5年11月、『産業大博覧会』で発表しました。
 生徒が「ヒントになるかな」と修学旅行で撮った魅力的な都市の写真や、生徒たちが考えた「佐倉のまちづくりの提案」を展示し、来場者にアンケートを実施しました。

産業大博覧会で展示した「まちづくりの提案」ポスター

 『クリエイティブストーリーズ』では、これまでに学習してきたことをまとめ、発信することにより、人に伝える力を養います。
 令和6年4月、これまで一年間、『さくら咲クリエイション』に取り組んできた3年生が、QVCジャパンでプレゼンテーションの4つの極意を学びました。

QVCで得た知識を活かした学習発表ポスター

初年度を終えて

――一年間お疲れ様でした。『さくら咲クリエイション』はねらい通り進みましたか?

 設定したゴールに向けて進みながら軌道修正していくという一年でした。ねらいと違ったものが得られることもねらいですし、生徒たちの表情にそれが表れていますね。結果的に、ねらいを超えて着地できたと実感しています。
 また、外部との関係も手探りでした。佐倉市役所やQVCジャパンさんと紹介を通してつながっていき、ほぼ一年通して校外学習になりました。終わった今は充実しています。

――特に印象深い取組みはありますか? 生徒さんの反応は?

 産業大博覧会に参加するのは初めての取組みで、生徒が大人と関わることに不安もありました。しかし、出展ブースでお客さんや企業のみなさんに向けて、生徒が実際に呼び掛けをしていると、自然にコミュニケーションが取れるようになりました。
 また、佐倉商工会議所と連携して企業ブースを廻り、企業の技術を目の当たりすることができました。従来なら、高校3年生の夏休みに初めて企業と接することが多いですが、今回は、2年生のうちに、肩の力が抜けた状態で企業の方々とコミュニケーションできたことは、彼らにとっては大きいです。

産業大博覧会での出展ブース。お客様とのふれあいにも慣れ、笑みがこぼれます。

――新しい取組みも始めたそうですね。

 『クリエイティブストーリーズ』でプレゼンテーションを学んだこともあり、佐倉南高校でインスタグラムを始めました。
 アンケートや意見をもらう企画を始めるために開設しましたが、高校の広報媒体として展開し、生徒にも記事を書いてもらえる仕組みをつくれればいいなと考えています。

――今後は、どのように『さくら咲クリエイション』を進めていきますか?

 昨年度より飛躍していきたいです。その時そこにいる生徒たちの個々の実態や課題を加味し、教員たちがデザインしていくのが『さくら咲クリエイション』です。
 生徒の「色」は毎年違います。生徒も違えば、その生徒を見ている先生も違う。生徒の背景や事情を踏まえ、この学年にはこうしたほうがいいよねと、先生が行った工夫が生徒の成長を促すプランになる。そうして、手探りでもゴールを設定して工夫してやっていく。そのアウトプットがプロジェクトに落とし込まれていくのです。
 だから、私たちは、去年とは違うワクワク感を生徒に提供していくことができるのです。

――『さくら咲クリエイション』を通して、佐倉市をどんなまちにしていきたいですか?

 生徒たちは、自分たちや学校の中だけで解決しないことを、まちで解決することを学んでいます。生徒のがんばりや挑戦を、地域や企業が見守ってくれるまちであってほしいです。
 現3年生においては、産業大博覧会でデータを集め、活動してきた成果を『クリエイティブストーリーズ』でプレゼンすることを予定しています。楽しみにしていてください。

千葉県立佐倉南高等学校

〒285-0808 千葉県佐倉市太田1956
電話043-486-1711(代表)
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佐倉南高インスタグラム
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