東京2020オリンピックの聖火ランナーに聞く!走ることで伝える想い更新日:2021年09月14日
東京2020オリンピックの千葉県選出聖火ランナーとして、聖火を引き継いだ齊藤太郎さん。佐倉市に拠点を置く総合型地域スポーツクラブ「NPO法人ニッポンランナーズ」の理事長であり、マラソンランナーでもあります。
走ることを通じて、齊藤さんが子どもたちに伝えたい想いから、佐倉市のトレーニング環境まで、ゆったりとしたペースでお聞きしました!
聖火ランナーとしての想い
東京2020オリンピックの聖火ランナーとして、聖火をつないだ齊藤さんに、聖火ランナーとして、点火式に参加したときの想いなどを伺いました。
――聖火ランナーに選出されたときのお気持ちは?
千葉県から聖火ランナーの募集があった際、キーワードが「絆」、「仲間」というキーワードだったんですね。応募にあたっては、これまでヘッドコーチとして地域スポーツクラブを運営してきたことを、こうしたキーワードに沿う形で伝えさせてもらいました。
聖火ランナーに選ばれたときは、光栄であると同時に、選出されなかった方も身近にいて、重圧を感じましたね。
他の聖火ランナーには、獅子舞など伝統を守ってきた方がいらっしゃいましたし、数ある候補の中で、地域スポーツクラブ関係者から選んでいただけたことに意義があると感じています。
――聖火の点火セレモニーで感じたことは?
火に重さはないですが、前の聖火ランナーから引き継いだ火を次のランナーへ渡す瞬間には、神聖な火の重みを感じましたね。
※千葉県では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、公道での聖火リレーに代わり、点火セレモニーを実施。
――東京オリンピックは、世界中のアスリートの記憶に残る試合に溢れていました。齊藤さんにとって、スポーツの魅力とは?
私自身もアスリートですので感じていますが、まず、主役のアスリートは、競技で最高のパフォーマンスを出すことを第一義に頑張ってもらいたいと考えています。そういったアスリートの姿勢や生き方や結果に、応援する側は共感や感動を抱くんだと思います。
今回の東京オリンピックで印象に残っている場面はたくさんあります。佐倉市に住んでいますので、近くの順天堂大学の選手が出場している試合には注目しました。試合を観て、世界のトップ選手と対等に勝負できるんだなぁと感動しました。
――明日を担う子どもたちに、スポーツを通じて伝えたいことは?
私は、ナンバーワンになることがすべてではないと思っています。
私たちのクラブに来る子どもたちも、「仲が良い子がいるから」、「速くなりたいから」などいろいろです。
子どもは、決して能力の低い小さな大人ではありません。メダリストの練習の縮小版に取り組むようなやり方よりも、子どもたちの中にある関心や目的が尊重されることが大事ですし、そのためには、遊びやゲーム要素を含めながら、スポーツを楽しんでもらいたいですね。
スポーツを通じて人々の生活を豊かに!~ニッポンランナーズ~
齊藤さんが理事長を務めるNPO法人ニッポンランナーズは、佐倉市に拠点を置いています。地域スポーツクラブとして、どういったことに取り組んでいるかお話を聞きました。
――どういった目的をもって運営しているのですか?
ニッポンランナーズの理念は、スポーツを通じて人々の生活を豊かにすることです。ランナーには、「いつまでも健康的に美しいフォームで走り続けよう」をテーマにしています。
記録を目指す人、スポーツに生涯関わり続けることを目指す人、いろいろなメンバーがいますが、ここは、ランニングを通じて、肩書関係なくフラットな関係で多くの方とつながれる場所だと思います。
――皆さんで運動すると健康にも良さそうですね。
仲間に会いたくて来た、試合の結果を報告したくて来たというメンバーもいますし、ゆっくりまちなかを走るということに魅力を感じている方もいます。新型コロナウイルス感染症が広がる前は、練習後に一緒にお昼ご飯を食べたり、みんなでゆっくりお話をしたりしていました。
ジョギングなどの運動を1人単独で日々取り組まれる方よりも、運動はしないけれども何らかの組織に関わり、社会的活動に従事してコミュニケーションを取られている方の方が、健康寿命が長いというデータがあるんです。
私たちの活動する地域スポーツクラブには、運動とコミュニティの両側面が含まれており、いろいろな方が関わり合いながら日々活動をしています。クラブライフが生活の柱になっているとおっしゃる方が何人もいます。メンバーの皆さんの心身の健康にプラスに作用しているのではと考えています。
ニッポンランナーズは、2001年に設立しましたが、当時は、市民ランナーが専門的な方から教わるといった環境は、全くありませんでした。そういった中、実業団チームで専門的なトレーニングを積んでいた私たちは、トップレベルの選手だけではなく、ランナーの裾野を広くしようと考え、市民ランナーの指導を始めたという経緯があります。
――具体的な活動を教えてください。
クラブ運営がメインですが、定期的に講師をやったり、ランナーを派遣したりしています。
例えば、佐倉市で行われる佐倉マラソン大会では、給水所の運営、公式ペースランナーの提供といった、参加ランナーへのおもてなしの協力をしています。また、市内の公民館では、健康体操教室、ジョギング教室、熱中症予防教室などの講師を務めています。子どもたちに対しては、運動会に向けたランニング教室などをこれまで実施してきました。
これからも走り続けたい!
――今後、齊藤さんが挑戦していきたいことは?
これまで、マラソンランナーとして生きてきましたので、レースに出続けること、また、「エージ・シュート・ラン」(フルマラソンで、2時間プラス「年齢分」を切ることを目標に走ること)に挑戦していきたいです。フルマラソンを60歳でも3時間(2時間プラス60分=60歳)を切りたい。生涯を通じて、マラソンを続けていきたいと思っています。
クラブについては、人が循環することが大事だと思っています。指導者もメンバーも、若い方が加入し、多世代が集まることがクラブを維持していく上で重要だと考えています。
佐倉の魅力
――佐倉市は、スポーツ界で活躍するアスリートを数多く輩出しています。齊藤さんにとって、佐倉市の環境とは?
佐倉市には、周辺の自治体から走るために来るランナーが多いんですよ。というのも、佐倉市は、ジョギングロードや運動公園など走るための環境が整っているからです。
また、まちは起伏や彩りに富んでおり、季節ごとに変わる風景を見ながら走ることができますよね。佐倉城址やオランダ風車をめぐるなど、変化に富む練習ができるのが佐倉市の強みだと思います。
私は、「天地人」という言葉で佐倉市の環境を考えたときに、「天」(佐倉市出身で多くのメダリストを育てた故小出義雄氏やニッポンランナーズ創設者の金哲彦氏という看板・系譜)、「地」(トレーニング環境といった土壌)、「人」(会員、行政、ゆかりのアスリートなどそこに集う人々)の全てがそろっていると思うんです。まさに、佐倉市はランニングの聖地ですね。
ここ最近、岩名運動公園には、強豪校や実業団チームも練習しに来ますよね。トラック練習やロード練習ができ、さらにコンディションに不安があるランナーは、ウッドチップの柔らかい地面で調整するなど、多様な練習ができるからだと思います。
近い将来、佐倉市ゆかりのアスリートが出てくるといいですね。
【プロフィール】
佐倉市に拠点を置く総合型地域スポーツクラブ「NPO法人ニッポンランナーズ」理事長。
東京2020オリンピックの千葉県選出聖火ランナーとして、点火式に参加。
佐倉市在住。